2ntブログ
2011-11-27

女房なんてものは…

昨日、先日亡くなった立川談志のドキュメント番組をチラリと観た。
談志が得意とする演目「芝浜」を口演しているところだった。

「芝浜」は私も好きな演目なので、少し耳を澄まして聞いていた。

「・・・あれ?」

人は比べるものを持っていると、どうしても自分の価値観と比較してみたくなるもので、5代目古今亭志ん生の「芝浜」を久しぶりに聞いてみたくなった。

でね、どんなもんだと聞いてみれば、さっきまで比べようとしていたことなどすっかり忘れて聞き惚れてしまう。

はあ~…気合が入れば入るほどクサくなる聞きどころも、まるで「ふふん、ふふん」と鼻歌でも歌っているかのように聞こえてくるんだから不思議だよね。

そのくせ聞き終わった後には心がほのぼのとしてきて、おまけに泣けてくるのだから…なんとも言いようがない。
もう名人なんてものじゃないんだろうなぁ…彼が落語そのものとしか言いようがないよね。

私にも落語の演目のような馬鹿馬鹿しい時間があった。
幼い頃、仕事を終えて遅い晩酌をする父の膝の上にちょこんと座り、父と母と一緒に落語を観るのが好きだった。

「こいつ、おもしろくねぇなぁ~」と必ずケチを付けながら、背中に伝わる微かな響きで父が苦笑しているのを感じた。

落語に登場する夫婦のやりとりは、私の両親の会話とどこか似ていて、これがまた落語にでてくる亭主の口調が、父とそっくり似ていたから、尚、面白い。

「芝浜」の中に「女房と畳は新しい方がいい…」という台詞があるんだけど、志ん生は、ごにょごにょと言葉を濁して「女房は…新しくねぇ方がいい…」と取って付けるあの間合いは最高だよ。

先生も大好きな演目「変わり目」の夫婦の掛け合いは、毎日、父が母に言っていることだった。
だからかなぁ~耳が肥えてしまって、下手な落語家の噺より父の噺を聞いている方が面白かった。

「変わりの目」のお話は、酔って帰った亭主に酒を飲ませない妻とのやりとりです。

「お前は俺にお酒を飲ませません!といえる権利がこの家にあるのかぁ?」

「なんだぁ~てめぇ~は…、かかあじゃねぇか!」

「かかあのくせしやがって、この女房の女!!!」

「俺は主だぞ、一家のうちじゃあ~主が一番偉いんだ! ん~なら区役所に聞いてみろっ!!!」

というくだりがあるんだけどね、母はいつも父に同じようなことを言われてた。

お話の中では、おでん好みを亭主に聞きなおす妻に「てめえ~俺の手元に何年飼ってると思ってるんだ!」と怒りながら、「お前なんか頭なんてなくていいんだ!」と言う。

「女なんてものは、口の聞き方さえよけりゃあ~それだけで器量よしになるんだよ」と続けて来る。

それがあまりにも父のしゃべりと同じようで可笑しくてね、おまけに先生の日常会話までもがセットで脳裏に重なると、可笑しくて仕方ない(笑)

母もいつも笑ってた。
あまり馬鹿笑いすると「お前は馬鹿だ!ちょんだ!」とまた怒られるものだから、父がソッポを向いてる隙を見てこっそり笑ってた。

でもね、どの話しをしていても、父の落ちはいつも同じなんだけどね。

「お前は俺がもらってやったんだから、幸せで当然だろう」とえばって言う。

そのくせね、父は誰よりも女房自慢なんだよ。
「こんな俺に惚れてくれる女は、お前しかいないだろうなぁ~」と酔うと本音がほろりと出ちゃう(^^♪

まったくもって馬鹿馬鹿しい人情噺を、飽きもせず聞かされてきたものだよなぁ…。
飽きないどころか?今思い出しても可笑しくて、繰り返し何度でも笑える落ちそうで落ちない話。

そうそう、最近の結婚事情というのは大変らしいね。まず、恋愛に条件があるらしいもんね(笑)

女が少し賢くなりすぎたのかなぁ?
それとも男が女を飼う自信がなくなったのか?

どちらにしても男と女の関係が、複雑になって良いことなんて一つもないよ。

先日、秋の旅に行った際、何気なく先生に「蕎麦とうどんどっちが好き?」と聞いたら、暫く無言の後、ものすごく怒ってた。

「おい!お前、長年、俺と一緒にいながら今更聞くようなことか!!!」ってね(笑)

私の可笑しな落語世界は、過去から現在、そして未来へと続いてる。
上手い噺家というのは、生きてる限り創作世界を作り出すものなんだねえ~(^^)v
美月

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プロフィール

美月

Author:美月
今年の夏で49歳になります。
月日の経つのは早いもので、不倫愛歴七年目を迎えました。この出会いに感謝して、灰になるまで恋を…と願っています。

幼い頃から月に心惹かれ、今では月が心を映す鏡となっています。こんな月マニアの私の為に、愛する人が「美月」と名づけてくれました。いつまでも大切に使っていきたいと思います。

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