2013-10-02
九十九里・勝浦の旅 (後編)
九十九里から勝浦まで車を走らせること二時間余りだったかな、途中、大原の裸祭り渋滞に捉まり、サラシを巻いた若い女性に喜ぶ先生を尻目に、賑わう町並みをゆっくりと進んでいきました。
勝浦のホテルは、急な坂道を上った高台にありました。
いつもの旅はゆっくりと街を散策しながら、ご当地気分が味わそうなお店を探しての飲食ですが、今回の旅は、ホテルでゆっくりとお酒を飲み、磯三昧することに決めていたので、ホテルに着くとさっそく勝浦の商店街に向かいました。
あっ!缶ビール一本飲んでから…。
朝から運転して、馬に乗って、また運転してと、お疲れ気味の先生へのご褒美は、冷えたビールが一番かな(^^♪
ホテルから商店街までの距離は短かく、真剣に歩けば10分程度で着いてしまうかもしれません。
だけど、気が遠くなりそうな急な坂道が下界までを遠ざけているので、意識と所要時間とのギャップは拭えなかった。
今は静かに暮らす猟師町の人達の暮らしぶりが垣間見れる家を、一軒一軒覗き込みながら歩けば、子供の頃の夕暮れを思い出す。
どこかで一つ明かりがつけば、ポンポンと続いて明かりが灯り出し、ガス湯沸かし器が、”ぼっ”と青い炎をあげれば、アルミ鍋に寝かされた煮魚の甘じょっぱい匂いが油でギトギトに黒ずんだ換気扇から漂ってくる。
シッカロールと蚊取り線香の香りで夏の訪れを鼻で感じた。
秋にもなると蒸かしたサツマイモと栗が日替わりで日に焼けた炬燵の天板の上に置かれていた。
今思えば、昔の食材は、どれもどこか土臭くて決して美味しいものではなかったように思うけれど、商店街の店先に旬を感じる瞬間が、どの季節にも用意させていた。
そして勝浦にも…季節を感じる瞬間がちゃんと残されていたことに感動した。
二人の指を合わせて数えられる程度の住宅地を抜けると、商店街が開けてきた。
えへへ、町の明かりが嬉しかったこと…(^^♪
さっそく魚屋さんへと出向いてみる。
店には床敷きの水槽が3,4つ置かれていて、壁際の水槽にはサザエが大小分けてあり、ガラスケースの中は申し訳なさそうに加工品が並べられていた。
お店の人…(いいおじさんになった息子&そのおかあさん=おばあさん)最初はとても無愛想だった(*^^)v
まあ、当たり前だよねぇ~。
だってお土産やさんでもないのに、どこの馬の骨ともわからない観光客が、地元の人相手の魚屋さんに買い物に来ているのだから、愛想したって次に繋がらないもん。
だけどね、さすが商売人です!!!
先生が「大き目のサザエを刺身にして」と頼み、「ながらみ(貝)を残った分、全部ちょうだい」と言ったら、急におばあさん愛想が良くなった(*^_^*)
ちなみに私は、裏と表がはっきりしている人が大好きです(笑)
刺身を用意してくれている間、暇つぶしに外を眺めると細い路地の入り口に「朝市会場」の看板が掲げてあった。
「朝市があるの!?」と聞いてみたところ、「ええぇ~、あんた勝浦の朝市知らないのぉ~???」と、おばあさん少々驚いた顔をしながらも、あれこれと親切に教えてくれた。
お醤油が欲しかったので近くのスーパーの場所を聞くと、おばあさんの知り合いの店だったのか?「大したもの揃ってないけど行ってあげてぇ…」とお願いされた。
えへへ、お願いなんてされなくても遠くのスーパーまで歩く気力がないから行くんだけどね。
でもちっこっと良い子ぶって、「じゃあ、行ってくるね!」と、さも恩着せがましく愛想してしまうところが私の嫌味なところだよなぁ~!(^^)!
街の小さな店には、コンビニさながらその町の人の最低限必要な品が揃ってる。
地方など行くと面白いのが、普段見かけない地元の酒が何気ないところに並んでいるところかもしれない。
買い物を済ませて坂道を上がっていく頃になると、日はすっかりと暮れ、夜の静けさに変わっていた。
早速、部屋について買った食材の調理を始める。
ホテルには調理器具も揃っていて、なんでも作ろうと思えば作れる。
…とは言っても、特別なことはなく、ながらみを塩茹でし、サザエの刺身を並べ、アルミのボールいっぱいの氷と焼酎、そして好みの菓子でテーブルを埋める。
二人並んでテレビを見ながら晩酌を楽しみながら、12階のベランダに腰掛け、静かに揺らぐ黒い海を眺めて、自分たちのことだけを語る。
登場人物が二人しかいない話であっても、語りきれないほど豊富な経験談がある。
喧嘩した思い出さえも、この夜を境に楽しい思い出へと変わり、全てのことは、今、この瞬間の為に起こったのではないかとさえ思えるほど、心穏やかな夜を満喫できた。
一生のうち、何度、今があって良かったと思えるだろうか?
少女の頃、そんなことを真剣に考えていた。
いつしか大人になり、「幸せってなんだろう?」と疑問に思うことさえなくなった。
望む幸せをどんな形で描いて良いかわからなければ、幸せになりたいと言いづらくなる。
そんな時は「不幸になりたくない」というのが妥当であって、幸福にランクアップする気力が失われてしまっている段階で高望みもないのです。
欲がないことは上品かもしれませんね。
でも人間だもん、どこか血生ぐさいところがあっても良いと思う。
大人だって、たまには駄々を捏ねたいよね…。
弱音だって吐きたいし、誰かに甘えて強く抱かれて守られたいと思う日もあるよね。
こんなにも無力な私を受け入れてもらえたら、「あなたに逢えてよかった」…と言ってみたいと思うよね。
私は先生に出会えて、「先生に逢えて良かった」と言えたことが何より嬉しい(^^♪
…と先生の寝顔を見ながら思った。
風音が靡いている暗い夜の海の中、穏やかな息遣いな聞こえる。
「明朝は、早起きして朝市に行こう」と先生は言ったけれど、その約束は言った先から消えているように感じた。
だって観光化された朝市より、見知らぬ街の商店街の方がよっぽど楽しいと思ったからね。
それにその街に住む人の様子がわかる地元の商店さんと話す方が、美味しい物に在り付ける。
えへへ、予想通り、朝市には行かなかった。
まあ、先生が言えば、想定通り、朝市には行かなかったとなるだろうけどね。
でも、朝市に行かなかったおかげで、予想外の思い出を作ることができた。
帰り道、またまた普段観ることのできない電車に出くわしてしまう。
電車オタクに負けないほど、目を輝かせて電車の到着を待った養老渓谷駅。
小湊鉄道のお話は、次回書こうと思います。
美月
勝浦のホテルは、急な坂道を上った高台にありました。
いつもの旅はゆっくりと街を散策しながら、ご当地気分が味わそうなお店を探しての飲食ですが、今回の旅は、ホテルでゆっくりとお酒を飲み、磯三昧することに決めていたので、ホテルに着くとさっそく勝浦の商店街に向かいました。
あっ!缶ビール一本飲んでから…。
朝から運転して、馬に乗って、また運転してと、お疲れ気味の先生へのご褒美は、冷えたビールが一番かな(^^♪
ホテルから商店街までの距離は短かく、真剣に歩けば10分程度で着いてしまうかもしれません。
だけど、気が遠くなりそうな急な坂道が下界までを遠ざけているので、意識と所要時間とのギャップは拭えなかった。
今は静かに暮らす猟師町の人達の暮らしぶりが垣間見れる家を、一軒一軒覗き込みながら歩けば、子供の頃の夕暮れを思い出す。
どこかで一つ明かりがつけば、ポンポンと続いて明かりが灯り出し、ガス湯沸かし器が、”ぼっ”と青い炎をあげれば、アルミ鍋に寝かされた煮魚の甘じょっぱい匂いが油でギトギトに黒ずんだ換気扇から漂ってくる。
シッカロールと蚊取り線香の香りで夏の訪れを鼻で感じた。
秋にもなると蒸かしたサツマイモと栗が日替わりで日に焼けた炬燵の天板の上に置かれていた。
今思えば、昔の食材は、どれもどこか土臭くて決して美味しいものではなかったように思うけれど、商店街の店先に旬を感じる瞬間が、どの季節にも用意させていた。
そして勝浦にも…季節を感じる瞬間がちゃんと残されていたことに感動した。
二人の指を合わせて数えられる程度の住宅地を抜けると、商店街が開けてきた。
えへへ、町の明かりが嬉しかったこと…(^^♪
さっそく魚屋さんへと出向いてみる。
店には床敷きの水槽が3,4つ置かれていて、壁際の水槽にはサザエが大小分けてあり、ガラスケースの中は申し訳なさそうに加工品が並べられていた。
お店の人…(いいおじさんになった息子&そのおかあさん=おばあさん)最初はとても無愛想だった(*^^)v
まあ、当たり前だよねぇ~。
だってお土産やさんでもないのに、どこの馬の骨ともわからない観光客が、地元の人相手の魚屋さんに買い物に来ているのだから、愛想したって次に繋がらないもん。
だけどね、さすが商売人です!!!
先生が「大き目のサザエを刺身にして」と頼み、「ながらみ(貝)を残った分、全部ちょうだい」と言ったら、急におばあさん愛想が良くなった(*^_^*)
ちなみに私は、裏と表がはっきりしている人が大好きです(笑)
刺身を用意してくれている間、暇つぶしに外を眺めると細い路地の入り口に「朝市会場」の看板が掲げてあった。
「朝市があるの!?」と聞いてみたところ、「ええぇ~、あんた勝浦の朝市知らないのぉ~???」と、おばあさん少々驚いた顔をしながらも、あれこれと親切に教えてくれた。
お醤油が欲しかったので近くのスーパーの場所を聞くと、おばあさんの知り合いの店だったのか?「大したもの揃ってないけど行ってあげてぇ…」とお願いされた。
えへへ、お願いなんてされなくても遠くのスーパーまで歩く気力がないから行くんだけどね。
でもちっこっと良い子ぶって、「じゃあ、行ってくるね!」と、さも恩着せがましく愛想してしまうところが私の嫌味なところだよなぁ~!(^^)!
街の小さな店には、コンビニさながらその町の人の最低限必要な品が揃ってる。
地方など行くと面白いのが、普段見かけない地元の酒が何気ないところに並んでいるところかもしれない。
買い物を済ませて坂道を上がっていく頃になると、日はすっかりと暮れ、夜の静けさに変わっていた。
早速、部屋について買った食材の調理を始める。
ホテルには調理器具も揃っていて、なんでも作ろうと思えば作れる。
…とは言っても、特別なことはなく、ながらみを塩茹でし、サザエの刺身を並べ、アルミのボールいっぱいの氷と焼酎、そして好みの菓子でテーブルを埋める。
二人並んでテレビを見ながら晩酌を楽しみながら、12階のベランダに腰掛け、静かに揺らぐ黒い海を眺めて、自分たちのことだけを語る。
登場人物が二人しかいない話であっても、語りきれないほど豊富な経験談がある。
喧嘩した思い出さえも、この夜を境に楽しい思い出へと変わり、全てのことは、今、この瞬間の為に起こったのではないかとさえ思えるほど、心穏やかな夜を満喫できた。
一生のうち、何度、今があって良かったと思えるだろうか?
少女の頃、そんなことを真剣に考えていた。
いつしか大人になり、「幸せってなんだろう?」と疑問に思うことさえなくなった。
望む幸せをどんな形で描いて良いかわからなければ、幸せになりたいと言いづらくなる。
そんな時は「不幸になりたくない」というのが妥当であって、幸福にランクアップする気力が失われてしまっている段階で高望みもないのです。
欲がないことは上品かもしれませんね。
でも人間だもん、どこか血生ぐさいところがあっても良いと思う。
大人だって、たまには駄々を捏ねたいよね…。
弱音だって吐きたいし、誰かに甘えて強く抱かれて守られたいと思う日もあるよね。
こんなにも無力な私を受け入れてもらえたら、「あなたに逢えてよかった」…と言ってみたいと思うよね。
私は先生に出会えて、「先生に逢えて良かった」と言えたことが何より嬉しい(^^♪
…と先生の寝顔を見ながら思った。
風音が靡いている暗い夜の海の中、穏やかな息遣いな聞こえる。
「明朝は、早起きして朝市に行こう」と先生は言ったけれど、その約束は言った先から消えているように感じた。
だって観光化された朝市より、見知らぬ街の商店街の方がよっぽど楽しいと思ったからね。
それにその街に住む人の様子がわかる地元の商店さんと話す方が、美味しい物に在り付ける。
えへへ、予想通り、朝市には行かなかった。
まあ、先生が言えば、想定通り、朝市には行かなかったとなるだろうけどね。
でも、朝市に行かなかったおかげで、予想外の思い出を作ることができた。
帰り道、またまた普段観ることのできない電車に出くわしてしまう。
電車オタクに負けないほど、目を輝かせて電車の到着を待った養老渓谷駅。
小湊鉄道のお話は、次回書こうと思います。
美月
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